あれから1年が過ぎようとしている。あの日、ウクライナの戦火を逃れて、故郷である日本の土を踏んだ。予想もしなかった故国での生活が始まった。
「どうぞ、どうぞ」
北海道旭川市の郊外。公営住宅を訪ねると、白髪の男性が案内してくれた。
降籏(ふりはた)英捷(ひでかつ)さん(79)。日本統治下の旧樺太(現ロシア領サハリン)で終戦を迎えたが、旧ソ連の占領で日本に帰国することができず、20代の頃からウクライナで生活してきた。
ロシアのウクライナ侵攻から逃れて出国し、昨年3月から旭川市で一人暮らしをする。先に永住帰国した兄弟姉妹やその知り合いらと往来しながら、穏やかな生活を続けてきた。
「日本国民として生まれ、ソビエト連邦ロシアの国民となり、ソビエトが崩壊してウクライナの国民となった。それが私の人生でした」
老後に下した大きな決断
静かに半生を振り返る降籏さ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル